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【平田オリザさんインタビュー】 4/4その④オリザさんの夢~演劇が持つ力とは!?~

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Q:震災からの復興の中で、演劇が持ってる力や、演劇に出来ることって何だと思いますか?

三つくらいに分けて考えた方がいいと思うんですね。一つは、演劇に限らず芸術そのものが持っている力ですね。みんなの気持ちを慰めたりとか、励ましたりとか、勇気付けたりとか、そういう力です。例えば、音楽は分かり易いですよね。被災地にも慰問の人が沢山来たと思うんですけど。でもね、演劇にもそういう力があると思っていて、演劇で励まされたり勇気づけられたりする人もいると思うんですね。でも、もう一つ私達芸術家の仕事は、今のみんなのためだけじゃなくて。・・・例えば、震災があってみんなはすごい大変だったと思うんだけど、その時、東京では自粛って呼ばれる、芸術活動の停止がたくさんあったでしょ?でも、今私達が作品を創るのを辞めてしまうと、100年後、200年後の地球の裏側の被災者は、何によって慰められるのか?っていう話なんだよね。みんな、仮設住宅とか避難所の人とかさ、慰問にアーティストが来て、もちろんEXILEとかAKBとか来たらみんな喜ぶけど、被災者が一番慰められたのは、やっぱり長年歌い継がれてきた唱歌だとかクラシック音楽だったと言われていますよね。そういう風に人間は、すごく困ったことがあったり、すごく強い運命にぶつかった時に、何かに救いを求めるよね。そのために芸術作品の蓄積があったんだよね。その蓄積を作るっていうのが私達芸術家の仕事なんだと思うんです。作品が、今直接役に立つかどうかは分からないんですね。だから、今の君たちや、今の被災者に役に立つかどうかっていうことが芸術の価値を決めるわけではないんですよね。100年後の被災者のためにやっているのかもしれないんですよね、今の私達がやっていることって。っていうことはまず一つ。

それからもう一つは、良く言われるコミュニティ維持とかコミュニティを復興、再生させるための役割ですね。例えば、宮城県の女川町ですね、東北電力の原発があるところです。あそこは入り江が大変入り組んでいて、70%くらい家が流されたんです。あそこは高台移転するしかないんだけど、すごい浜が小さいから、自分の町を離れたくないとか、そういったことで合意形成がなかなかできない。そして、あそこは集落ごとに獅子舞があって、とても有名なんですが、その獅子頭も流されてしまったんですね。それが、寄付だったり、全国から送られてきて、どんどん獅子舞が復活してくのね。話が前後しますが、文化人類学っていう学問があるんですが、パプワニューギニアとか、未開の集落を研究し、人類が初期段階のどういう生活をしていたのかを研究する学問です。考古学は発掘なんだけど、文化人類学は今あるものを調べたり研究する学問なのね。その研究をしている人たちが、こんなにセオリー通りになるのか、って驚くぐらいに、獅子舞が復活した町から次々と高台への合意形成ができていったんですね。人間は経済の話だけをしていてもなかなかみんな話し合いが進まないのが、長年やってたお祭りを復活させると「まあ、色々大変だけどみんなで移るべ」みたいになるわけなんですね。それがもう一つの芸術の役割ですね。演劇は集団でやるものだから、そこが音楽や美術とは違って、こう役割分担をしたりだとか、とにかく幕が下りるまではどんな嫌な奴とでも、どうにかして上手くやらなきゃいけない。「しょうがねーな、あいつ、何か変な奴だけど、芝居は上手いし・・・」みたいなね()。そういうのが演劇の良い所だよね。だから、どんな未開の集落にも、必ずお祭りにはそういう演劇的なものがあるってことですね。

もう一つが、みんなが経験してきたことを、これまでの3年間で経験してきたことを、これから、声や形、色とか音とかにして届けなきゃいけないよね、特に福島の高校生は。これは福島じゃないんですけど、岩手県の達増県知事が、復興教育の話をしていて、「東北の被災地は、世界中から色んな支援を受けて助けてもらったので、岩手県の子供達は、世界中にお礼が言える子供に育てたい。」って話をしたんです。とても良いスピーチですよね。福島の場合はもっと複雑で、原発があって、それは30~50年かかる問題だから、君達がこれからも福島に住み続けるのなら、死ぬまで付き合って行かなければいけない問題ですよね。君たちは、自分で選んで福島に生まれたいって言って生まれてきたわけじゃないし、たまたまこうなってしまった。でも、福島で中高校生の時に表現教育に係った以上は、福島の事を何らかの形で伝えられるような人間になったほうがいい。それは演劇じゃなくてもいいんだけど、演劇もその一つの非常に有効な方法になるんじゃないかって思っています。

 



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Q:今描いてる夢は何ですか?

そうですね。個人的には劇作家として、特に海外での仕事では、今まで日本の劇作家が到達したことのないところで仕事をしているので、ここから先どこまで行けるかっていうのが一番ですね。サッカーで言えば、本田選手とか香川選手みたいなものでしょ?でもスポーツと違うのは、例えば「田中投手が何十億円の契約金でメジャーリーグに行った」みたいな、はっきりした数字がないから、なにで成功したっていうのが分からないけど、そこも含めて芸術の面白い所だと思うんですね。自分の死後に評価が高まるかもしれないし、全然忘れられるかもしれないし。だから、できるだけ長生きして、ちゃんと成果を上げたいっていうのがありますね。

もう一つは、日本の演劇についてですね。サッカーのJリーグができて、20年になるんです。Jリーグができて何が変わったかというと、日本のサッカーのマーケットを、プロ化して、リーグを世界と同じ仕組みにしたわけ。で、20年経った今、日本の代表チームは毎回ほぼ確実にワールドカップに行っているし、優秀な選手はヨーロッパで活躍できるようになった。自分の国のマーケットをオープンにしないと、日本の若者がどんなに才能があっても、海外で戦えるようにはならないとういうことなんです。できれば、日本の演劇のマーケットをちゃんと世界に開いて、世界の人が日本で活躍出来て、日本の若者が世界中の劇場で活躍できるようなシステムを作りたい。というのがもう一つの夢です。

 



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Q:今の演劇界って、今まで演劇に触れて来なかった人は劇場に入りづらいと思います。どうすれば変わると思いますか?

僕は、小学生から演劇の授業をやると良いと思います。僕はよく小中学校に演劇の授業をしに行くんですけど、小学生までは天使のように楽しそうに取り組むんですよ()。それが、中学生になると悪魔のように黙って、全然やらなくなる。思春期だから照れちゃってやらないんでしょうね。でもね、ちょっと考えてほしいんです。いくら恥ずかしいからって絵を描かない中学生はいないでしょ?音楽の授業で歌を歌わないってのもいないでしょ?それは、小学校から普通に授業があるからやれるんですよ。演劇は、いきなり中学でやらされるから、やれない。これは習慣の問題なんですね。抜本的な解決方法は小学校からやることだと思います。

あとは、特に地方の劇場の役割としては、演劇ってただ観るものではなくて、参加したり、観たりするものだから、参加できる機会と観る機会を両方提供する。そういう風に機能していくといいですね。

あとは日本は演劇の値段が高い。1,000円くらいで観られるようにしないと。日本は特別高いんですよ。ヨーロッパでは、少なくともミュージカルではないストレートプレイだと、26歳以下はだいたい色々割引されて7~10ユーロ(1,000円くらい)で観られるんです。定価は2,000円~3,000円で、他にも色々な割引があるんですよ。なんで日本は特別高いのかというと、まず、公的な支援が少ない。公的な支援がない=公的な劇場がない。となると民間の劇場で公演しますね。そうすると、特に東京は世界で一番土地代が高いんです。市場原理だけにまかせておくと当然劇場使用料も高くなり、チケット代も高くなるという。だから、そういう意味で日本の演劇のマーケットをちゃんと世界に開いて、世界の人が日本で活躍出来て、日本の若者が世界中の劇場で活躍できるようなシステムを作りたいと思っているんです。

 



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オリザさん、インタビューに答えていただき、ありがとうございました!


その⑤メンバーの感想編へ続く⇒



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by iplayfes_youth | 2014-03-14 22:10