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【平田オリザさんインタビュー】 3/4その③劇作家オリザさんに迫る!

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Q:演出家であり、脚本家でもありますよね。実際作品を創っていく時、どちらの部分が強いんですか。

まず自分としては劇作家の部分が非常に強くて、ほとんど8割劇作家と思ってる。他に演出してくれる人がいないから演出もするっていう感じです。あんまり他の人の作品を演出したこともないし、だから、基本的に僕は劇作家だと思っています。演出するときも、基本的には自分の台本をやるから、最初に書いてる段階からある程度イメージがあって、あとは俳優がしゃべりたいようにって言うか、「本当はあなたはこのようにしゃべりたいんですよ」ってのを演出する。俳優には、そもそもそれが分からないから、そこを演出する。

 

Q:自分も演劇をやっているんですが、良い役者っていうのはどういう役者ですか?

そうだね、そこに存在しているだけで面白いのが良い役者ですね。予測不可能な動きをする俳優がだいたい面白い。

 

Q:舞台とか作品を創っていく上で一番大切にしてることは何ですか?

そうだな。まぁやっぱり楽しいってことですね、みんなが。演劇は基本的に楽しいものなので、楽しくない人がいるのは何かが間違ってると思います。演劇以外の要素が入り込んでるんでしょう。しょうがないんだけどね。人間がやる仕事だから、入り込んでしまうのは。演劇だけやってれば楽しいはずなんです。でも、恋愛とか色々あるからね、人は。



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Q:オリザさんの作品は、台詞が生っぽいというか、まるで隣で聞いていたみたいな会話ですよね。あんな台本、どうやって作ってるんですか?

どうですかね・・・。なんで他の人が書けないのかが分からないんですね。僕は大学の教員でもあるので、例えば僕は海外での日本語教育の教科書を作ったんですが、日本語教育の先生が描いた本と、僕が書いた本を比べると、僕の本の会話文の方が圧倒的にリアルなんです。で、どこが違うのかを専門の学者さん達が現在分析しています()。その結果が分かると、なんで書けるのかが分かるのかもしれませんね。認知心理学っていう学問があるんですよ。例えば漆塗りがありますね。普通に考えると機械で均等に塗る方が、ムラなく塗れると思うんだけど、名人のほうが上手に塗れるじゃない。その名人の手の動きを何十時間もビデオに記録して、それを3D解析して、コンピューターで点と線で表していく。そうすると、例えば5回に1回、0.3秒の溜めがあるとか、そういうのが分かっていくわけ。それを機械に反映させると、機械が格段に良くなって、ほぼ名人の手の動きに相当近い所まで行くわけ。だから、そのうち分かるんじゃないかな?僕は書いている側だから分からないので、誰かが分析してくれないと分かりませんね。

ロボットもそうです。ロボットは、工学研究者がロボットを動かすとどうしても動きが大げさになる。実際の人間は、そんなに動いてないんですよね。もっと厳密に言うと、人間は様々な身体の部位を細かく動かしていて、省エネで動こうとするから、無駄な動きが適度に入るんです。例えば(目の前のコップを、横からガバッと取る)コップをさ、こうやってガバッって取るなんて、普通しないでしょ?リポビタンDCMとかじゃない限り()。必ず、何かをする前は無駄な動きが入るんですよ。机を触ってから(コップを)取るとか、他のものを触ってから取るとか。みんなが、「あの俳優さん、上手だな」って思うのは、その無駄な動きが適度に入るから上手いんですよね。ただ、俳優さんのかわいそうなところは、練習すればするほど上手くつかめるようになる。かっこよくつかめるよになる。そうすると無駄な動きが減るでしょ?俳優は、(稽古を)やればやるほどリアルじゃなくなるんですよ。ところが、世の中には天才がいて、何度やっても無駄な動きがでる。そういう俳優を上手い俳優と呼ぶのではないでしょうか。そういう研究を、アンドロイドでしてきたんですよ。



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僕が教えている大阪大学に、今度の「さようなら」のお芝居に出てくるアンドロイドを作った、石黒先生というちょっと頭のおかしい先生がいて()。どのくらい頭がおかしいのか説明すると、自分とそっくりのアンドロイドを作ったんだよ。でも、本人はどんどん年取って行っちゃうじゃん。その度に、自分とアンドロイドの容姿がどんどん離れて行ってしまうことが耐えられなくて、自分の顔を整形したの。リフトアップして、しわを取ったわけ。すごいでしょ()。でも彼の理屈では、アンドロイドを年取った自分に合わせて作るよりも、自分が整形した方が安いんですって。整形は50万、アンドロイドを作るのには300万くらいかかるからね。・・・というくらいおかしい人がいて()。彼の研究は、ロボットがどうやって社会の中に入っていけるかっていう研究なんです。そのためには、見た目や動きも含めて、ロボットが子供やお年寄りに怖がられないようにしたいわけです。そのためには、動きにも適度な無駄がないといけない。彼は、言語学とか認知心理学の人達と、そういった研究をしていたんですね。でも、学問というのは、沢山のデータを集めて平均値を出すものだから、無駄なうごきがあっても平均値に埋め込まれてしまうわけですよ。だから、なかなか上手くいかなかった。たまたま僕が大阪大に移った時に石黒先生と出会ったんです。で、ロボットに最初に2分くらいの台本を渡して、若い研究者達がロボットに動きをプログラミングしたものを見せてもらって、そのロボットの動きに対して、僕が「ここのこの部分に0.3秒間を置いてください」と言う風に、細かくダメ出しをして、修正してもらったら、その現場にいた全員から溜息が出るくらいにロボットの動きがリアルになったんです。でもさ、そりゃそうだよね。これまでは演出してこなかったんだもの。ロボット研究の中に、「演出する」という概念がなかったわけだから。それで、石黒先生が研究者達に「君らが2年かかったことを平田さんは20分でやった。これからは研究しないで解析だけをしなさい。」っていうことで、パラメーター化(数値化)して、今では特許も取っています。

要するに、その無駄な動きとかを的確に入れることができるのが、私達演出家とか作家とかのひとつの能力なんだと思います。だから、「何で出来るの?」って言われても分からない。逆に言えば、出来るからこういう仕事に就いているのかもしれない。多分、指揮者なんかが分かり易いですよね。指揮者って、細かい音の違いとかを聞き分ける能力があるんでしょうね。それが、作家の場合には言語とかの細かいニュアンスの違いとかを聞き分けて再現する。もう一回再現できないといけないからね。だから、「さっきと今と、違うなぁ」ってだけじゃダメで、「さっきと今とじゃ、このように違うから、こうやりなさい」って言えないとダメだから。その能力があるってことですね作家とか指揮者には。


Q:オリザさんの小説「幕が上がる」の女子高生の会話なんかもすごくリアルでびっくりしたんですけど、あれも頭の中で作るんですか?

()そうね、あれね、よく言われるんだけど、もうねー、気持ち悪い!とか言われるんだよ。ひどいでしょう()?でもそれ、普段は劇作家としては当たり前のことで。小説は初めて書いたから、僕を知っている人からすると、すごく違和感があったんだろうね。どうしても読んでると僕の顔が浮かんでくるらしいよ。あんなオッサンが書いてるのかっていう()。でも、それが仕事だからね。

 

Qてっきりモデルがいるのかと思いました!

それは、ないです。あるとダメ。できるだけ想像で書いたほうがいい。だからモデルがいると、さっきの言語学みたいに平均値になっていってしまうでしょ?無駄なことが出てこない。それはつまらないんですよ。

 



その④オリザさんの夢~演劇が持つ力とは!?~へ続く




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by iplayfes_youth | 2014-03-14 22:03